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第三十四夜 1998年12月20日
< 非公式八ヶ国外交会議 >
以前このエッセーで紹介した私のサウジアラビア人の友人のアディーブから連絡があ
り、早速彼のアパートに遊びに行ってきました。さすがお坊ちゃんだけあって、一月
1000ドル(約12万円)の学生という身分に不相応な部屋に住んでいまし
た。
ドアを開けた途端、香辛料の匂いがたち込み、同時に白い煙が私を包みました。火事
かと思い慌てて“アディーブ!”と叫ぶと、白装束をまとい、サングラスを掛けニヤ
ニヤしながら仁王立ちしているザ シークの様な狂ったアラブ人が、煙の中から私の目の前
に現れました。アディーブです。
アキレタ事に、私が来るまでず〜っとそのカッコをして待っていたそうです。煙りも
炊きっぱなしにしながら・・・・。ちなみに、アメリカでは良くある事ですが、ア
ディーブのアパートは禁煙です。
私が呆れた顔をすると非常に寂しがり、それまでの苦労を語りだしました。仕方なく
彼の演技を誉めてやり、機嫌を直させると、すぐさま立ち直り、次の来客へ向けてま
た性懲りもなく準備し始めました。イスラム教徒全てが厳格な訳ではありません。
その日は、アディーブのクラスメートと彼の英会話のインストラクターが集まり、国
際色豊かなパーティーになりました。サウジアラビア、UAE、韓国、タイ、中国、
台湾、アメリカ、そして日本。皆お国は違いますが、くだらないジョークに呆れる
のは世界共通であり、誰にも認められないアディーブのジョークはフセイン的といえ
るでしょう。
このメンバーで、どの様な話しをしたかというと、まずそのフセインについてでし
た。アディーブのインストラクターである若いアメリカ人のロブが、アメリカとイギ
リスのイラク攻撃について、アラブ諸国の政府ではなくて人々はどのようにとらえて
いるのかという問いが口火になり、非公式に八ヶ国外交会議を開く事になりました。
申し訳ありませんが、日本代表は・・・私です。
このメンバーには当事者であるアメリカ、イラクの近隣である二つのアラブ国家と、
その攻撃に反対している中国が含まれています。さぞかしエキサイトした会議になる
だろうと期待していたのですが・・・・・・、アディーブとUAE代表のモハメッド
の拍子抜けした回答で、特に私とロブは思わず口をポカンと開けてしまいました。
彼らから飛び出した言葉は何かというと、“関係ない”の一言でした。ただイラク国
民には同情するが、フセインやその軍隊はクレイジーだからどうなろうと“関係な
い”と言う事らしいです。しかし、今回の攻撃でフセインをターゲットにしていない
事について、あまり効果はないであろうとモハメッドは付け加えていましたが。
それを聞いていた韓国代表のキュウサンは、なぜ皆がフセインについてそれ程嫌悪感
を示すのか分からないと言ってきました。これには私とロブは驚いてしまい、韓国で
はフセインをどう思っているのかと聞くと、政府は別にして、一般人の中では、決し
て日本やアメリカで思われているような悪魔的な印象はないそうです。ビジネスで
も、それ程深くではないらしいですが、関係があり、今回ビルが沢山破壊されれば、
韓国の経済は良くなるかもしれないなどと物騒な事を語っていました。
タイ代表のウイットは、別に遠い国の事だから感心がないとこれまた拍子抜けさせる
意見をだし、そんな事よりタイ経済の問題の方が深刻だと言っていました。
では、中国、台湾代表(名前が思い出せません)はというと、ウイットと同じような
意見であり、私とロブをガッカリとさせました。それではこの微妙な関係の
二ヶ国(一国、一都市?)の将来について聞くと、“分からな〜い”といった返答を
し、でも仲良くすれば良いのに、とお互い肩を抱きながら笑っていました。
このメンバーはロブも含め皆25歳以上であり、社会経験がある者ばかりです。もち
ろん、日本で騒がれている若年層の政治経済離れとは異なり、皆国際問題について全
く知らないと言う事はなく、知ってはいるけど、それを熱く語るほど興味はなく、そ
れよりも、自分達の国で自分達がどういう風に幸せに人生を謳歌できるかと言った事
の方が、話も盛り上がります。世界経済や問題など、“そんな事ここで話してどうする
の?”と言った印象を持っているようでした。
もちろんそれぞれの国でいろいろな人がいるでしょうから何とも言い難いですが、た
だ往々にして、世界全体についで騒ぎ立てるのはアメリカ人と日本人だと言えるかも
しれません。そして世界は見れど、足元を見ていないのも日本とアメリカかだと言え
るでしょう。
よく考えてみると、彼らの国々や、又はヨーロッパではベルギーやオランダなどが、
日本やアメリカが騒ぎ立てたがる国際問題や世界最先端の科学技術などについて、い
ろいろ意見を出しているのを私は聞いた事がありません。では、それらの国々は、ただ日本
やアメリカと比べて“遅れた国”かと言えば、0メートル地帯であるオランダなどは、
人々の暮らしに密接したダム建設に関しては世界一の技術を誇っています。
このメンバーの中にいて、フセインを始め世界について話をしていて、最も身近に感
じたのがアメリカ人のロブでした。我々日本人やアメリカ人は、何かと自国の経済的
強さや生活水準の高さを他の国々と比べて誇ったり、科学の進歩や宇宙開発などを世
界に先駈けて取り組み、その成果を世界に発信する事に躍起になり、そしてそれらを
“どうだ〜”と言わんばかりに大々的に我が物顔で誇り、ある意味他の国々をリード
していると思いがちですが、では一体、他の国々では日本やアメリカをどのように捕
らえているのだろうかと疑問です。
私は各国の状況を深くは知りません。しかし、上記の様な事を考えると、世界をリー
ドしていると思い込んでいる日本やアメリカは、実はただ空回りしているだけであ
り、その二ヶ国に追随していると思っていた他の国々は、決してそういう訳ではな
く、ある意味“成熟した国家”として、大人が子供のハシャグの
を微笑みながら、そしてたまに呆れながら見守るように、日本やアメリカを
ただ手のひらで遊ばせているようなものなのかもしれません。
また、国際ニュースでは見た事はなくても、バラエティー番組などでたまに見る、
それらの国で幸せそうにのんびり暮らしている人々の姿は強く印象に残っています。
今日本は、戦後最悪の経済的状況と聞きます。しかし、国際経済競争力と人々の幸せ
な生活との間にどれだけ強い結びつきがあるかは疑問です。
今日本では、国内外から大きな変換が求められています。それは、経済そして政治の
立て直しが最大の焦点である様ですが、もしそれが歴史的な大変換であるとするなら
ば、それら焦点だけで済まないのが日本人だとも言
えると思います。時代の変化に沿って、時には変換が必要な時もあるでしょうが、そ
の度に文化を捨て、又人々の価値観まで変わって(アメリカに変えられて?)しまうのが日本人であ
る事は過去の二回の大きな変換により証明されています。“チョンマゲからザンギリ
頭”、“天皇万歳からブラピ大好き”となったように、今度起こるかもしれない改革
が、経済システムを変えるだけでなく、我々日本人の本来の姿からまた遠ざけてしま
うような気がしてなりません。
サウジアラビア人のアディーブも、その場にはいませんでしたが私の大学のスウェー
デン人の友人も、自国を心から誇りに思い、我々日本人がアメリカ人に合わせて価値
観を共感しようと、心にもないような事をアメリカ人に影響された態度や話し方で話
を進めようと努力する一方で、アメリカ人に反感を買おうが嫌われようがお国の“成熟
した文化”の自慢話を嬉しそうに語り続けます。
日本は伝統のある国だと言われています。しかし、先の二度の大きな変換でほとんど
の文化を失ってしまったとしたら、まだ立国55年という幼児国家であるとも言える
でしょう。その幼児に自分の意見を持ち、自分を誇りに思えと言っても無理かもしれ
ません。しかし一方で、アメリカに影響されつつも少しずつまた成長してきているとも言
えます。日本は今もしかしたら大きな二者択一を迫られているのかもしれません。
“成熟した国家”の仲間入りをするか、はたまた、ペリーそしてマッカーサーに続き、第三のアメ
リカ人による変換の為の道標を待つか。この選択は、今後の政府ではなく我々一般市民の大
きな後生への義務といえるのではないでしょうか。
では・・・・・・まず、アメリカの価値観を模倣する事からやめましょう。・・・・
好みはあれど、ジュリアロバーツってホント〜にキレイかどうか、もう一度自分に問い掛けてみま
しょう。・・・・ちょっと違うかな?
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